第8話・「開けチューリップ・そりゃナイアガラ」
暖冬といわれながらも時折厳しい冷え込みを見せた冬もとっくに過ぎ去り、
本格的な春を迎えた、大分県・豊後大野市…
今回のお話は、市内・緒方町が舞台である。
この日シリウス達は、緒方随一の観光名所にして
日本の滝100選にもその名を連ねる「原尻(はらじり)の滝」へと来ていた…
シリウス「いやぁ、すごい数のチューリップだね〜♪」
多英子「それはもう、緒方の春の恒例行事ですからね。
これだけの本数を植えていくだけでもかなりの手間ですよ…」
???「おーい、シリウスさ〜ん、多英ちゃ〜ん!」
と、チューリップを愛でる2人を呼ぶ声が。
多英子の茶飲み友達である鹿島あさひと、同じく友人の1人で
地元の警察官でもある門田さくら巡査である。
多英子「あら、あさひさんにさくらさん…貴女達も来ていたの?」
さくら「丁度いい具合に休みが取れたもので…
同じくたまたま暇だったあさひちゃんに誘われたんです」
シリウス「ここで会ったも何かの縁…良かったら君達も一緒に見て回らないかい?
仲間は多い方が楽しいだろうしね」
あさひ「そりゃもう、ぜひとも!」
…かくして、4名は連れ立って場内を見てまわる事に。
さくら「チューリップもいいけど、やっぱり滝も見て行かないとね」
あさひ「そうそう。なんといってもここは…ん?」
…おやおやあさひさん、何かを見つけた様子。
それはチューリップ畑の中を突っ切るように通された道、
突き当りには小さな鐘が備え付けられていた。
さくら「そういえば、先日ここで結婚式が行われたそうよ」
あさひ「なるほど…この通路はバージンロードというわけね」
さくらとあさひ、何を思ったのやらおもむろに鐘のヒモを掴んで…
カラン、カラン、カラン・・・
乾いた鐘の音が、チューリップ畑に響き渡る。
あさひ「ふ、ふっふっふ…こういうのはあやかっとかないと〜」
さくら「そうそう、幸せのおすそ分けってね…」
多英子「2人とも…目つきが何か怖いんだけど…」
途中色々と寄り道しながら、一向は原尻の滝へ。
幅120m、高さ20m…「東洋のナイアガラ」の二つ名を持つ、大瀑布である。
シリウス「この状態で見ると、結構な高さだねぇ。
下手に飛び込んだらひとたまりもなさそうだ」
さくら「いや…亡くなってる方もいるので、絶対に飛び込まないでくださいね」
あさひ「みんな〜、こっちから見る滝もすごいよ〜」
滝から少し下流にある吊り橋の前で、あさひが皆を呼んでいる。
シリウス「吊り橋か…あれも中々面白そうだ♪」
シリウス「確かに、この角度から見る滝はまた新鮮だね」
多英子「足場は不安定ですけど、これもまたスリリング…
デートには案外いいものかもしれませんよ?」
さくら「ふぅん、デート…ねぇ」
あさひ「デート、かぁ…って、あれ何ッ!?」
ため息をつく間もなく、異変を察知したあさひ。彼女が指差した先には…
滝つぼの水面が、異常なまでに渦巻いているではないか!
尋常ならぬ事態を察知し、シリウスが叫ぶ。
シリウス「みんな、伏せるんだ!!」
そして、次の瞬間…
水しぶきを上げて、滝つぼから姿を現したのは…
ハリウッド版ゴジラこと、ジラだ!!
ジラ「ぐぅ、川魚の食い歩きついでにタスカニゥムの探索に来たが…収穫なしか。
…ムムッ、あれはシリウス!?」
ラグナ「ほほう、これは何という好都合…
ジラ君、土産代わりにシリウスを仕留めてきたまえ!!」
ジラ「ハッハー、任せてプリーズラグナさん!
…というわけで、行くぞシリウス!!」
問答無用で襲い掛かろうとするジラ…
だが、そんなの輩を黙って見過ごすシリウスではない!
シリウス「この私の目の前で…好き勝手暴れられると思うなよ?
シリウス…ファイト・ゴウッ!!」
閃光と共に巨大化するシリウス…さぁ、ジラをやっつけろ!!
ジラ「HAHAHA、腹ごなしついでには丁度いいやな!」
先に仕掛けたのはジラの方だった。
自慢の脚力で一気に間合いを詰め…
ガキィィィン!!
スピード任せに爪を叩き込む!
シリウス「ぐぉっ!?」
シリウスもすかさず回し蹴りで反撃を行うが、
ジラは軽いフットワークでこれを回避、鋭い一撃も空を切った。
間髪入れず尾の一撃で追い討ちを掛けるジラ…
反撃の暇を与えない、ジラ得意のスピード殺法…シリウス危うし!?
あさひ「ちょ、シリウスさんが押されてるっ…!」
多英子「マスター…しっかり!!」
強烈なテイルアタックの直撃に、あえなくダウンするシリウス…
このまま成すすべなく敗れてしまうのか!?
ジラ「HAHAHA、天狼の首…貰い受けてやるネ!!」
既に勝ち誇っているようにも見える笑みを浮かべながら、
止めを刺すべくシリウスに近づいたジラ…その時!
シリウス「 隙 あ り っ ! 」
それまで倒れていたシリウスが突如起き上がり、
ジラに掴みかかる…そう、シリウスはこの一瞬を狙ったのだ!!
俊敏な動きが武器のジラも、捕まえてしまえばシリウスのペース。
ブンッと細身のボディを振り回し…
豪快に地面に叩きつける!!
ジラ「あうちっ!!」
フラフラになったジラに、ぶちかますのはもちろん…
シリウス「シリウス・エナジーブラスト!!」
ジラ「ガッデ〜ム!せめて鮎のシーズンまで居たかったYO〜!!」
爆炎と共に吹っ飛ぶジラ。
やったぜシリウス、大勝利!!
ラグナ「くっ、魚を喰うしか能のない様な奴では力不足だったか…
まぁいい。こちらの手駒はまだ豊富にあるのだからな…!!」
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多英子「お疲れ様でした、マスター」
さくら「おかげでチューリップ祭りも守られましたし、感謝しますよ」
シリウス「みんな無事で何よりなのは良いんだけど…
久しぶりにひと暴れしたら、ちょっとお腹が減ったなぁ」
多英子「そう言えばお昼もまだでしたわね…ならばこのままランチになさいません?
丁度ここは道の駅、食べる物に不都合はありませんわ♪」
あさひ「はーい、それじゃゴチになりまーす!」
さくら「って、ちょっとは遠慮しなさいよ…(・・;)」
チューリップの町であり、豊かな水と美味しい米所でもある緒方。
せわしい世間などお構いナシに、今日も水車は回り続ける…
次にシリウスを待ち受けるのは、果たして…?
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…その日の夜、帰宅したあさひは
動画通信である場所に連絡を取っていた。
あさひ「…以上が本日の報告です、大尉」
大尉「うむ…で、どうだったかね?鹿島少尉」
あさひ「はい、それはもうほっぺたがいくつあっても足りないほどの美味で…」
大尉「バカモノ!そんな事はどうでもいい…
あの『シリウス』という男についてだっ!!」
あさひ「…失礼。やはり彼は、近年続発する怪獣発生事象に対しては
こちらの保有戦力を大きく上回るだけのポテンシャルを示しており、
万全な協力体制が取れれば心強いのですが…」
大尉「私も少尉の意見に概ね同意するが…我々はともかく、
上層部はシリウスをいまだ完全な味方としては捕らえてはいないようだからな。
ご苦労、引き続き監視を続けてくれ」
あさひ「はっ!!」
って、あさひさん…アンタ一体何者なんだッ!?